データ取引の契約のポイント

データの帰属

 データに現にアクセスできる者同士は、当事者間で契約をすることによって、データの帰属先・処分権者を決めることが可能です。

 契約によって帰属先・処分権者を定めることは、データに限った話ではなく、特に珍しいことではありません。しかし、無体物であるデータについては、そもそも所有権という概念はなく、また、契約前には、知的財産権が発生している場合を除き、帰属先・処分権者が決まっておらず、契約によって帰属先・処分権者を創り出すことになります。

 契約によって、データの帰属先・処分権者を規定することは、一般的に、データの処分権や収益を特定の者に集中させることを意図している場合多いと考えられます。

 もっとも、「データの帰属先」について世間で相場観が形成されていないことから、データの帰属先を契約で決めることに困難が伴うことがあります。今後は、データ契約ガイドラインの普及などを通じて、データの帰属先についての相場観が形成されることが期待されます。

 データの帰属先を決定するに当たって考慮する要素としては、以下が考えられます。

  • データの性質
  • データの創出に対する各当事者の寄与度
  • データの利用により当事者が受けるリスク
  • データ取引に関して支払われる対価の金額
  • ある当事者をデータ帰属先とすることによって得られる社会的便益

データの性質・価値

 データの性質は、データの帰属先を決定する要素となり得ます。データの性質としては、(ⅰ)パーソナルデータを含むか否か、(ⅱ)アクセスの容易性などが考慮要素となります。

 パーソナルデータを含むデータの場合、その取扱いについて個人情報保護法に則る必要があるため、帰属先の決定に影響します。

 また、企業秘密のデータについては帰属先については、企業秘密として保護したい者を帰属先とする方向に働くことになります。

データの創出に対する各当事者の寄与度

 データの創出に対する各当事者の寄与度は、データの帰属先を決定する要素となり得ます。寄与度の考慮要素としては、(ⅰ)コスト負担、(ⅱ)センサの所有権、(ⅲ)センサの設置方法の策定者、(ⅳ)データの継続的創出のためのモニタリングの主体が挙げられます。

データの利用により当事者が受けるリスク

 データが、例えば、工場での生産ノウハウに直結するような秘密性の高いデータの場合には、これが外部に漏えいしてしまうと、データ保持者は大きな損失を被ってしまうことになります。このような場合には、そのデータは、漏えいにるリスクを負う当事者に帰属させることが、当事者の納得を得られ、かつリスク管理上も望ましいことが多いと考えられます。

データ取引に関して支払われる対価の金額

 データ取引は、必ずしも対価を伴うものではありませんが、対価が支払われる場合には、対価を支払った者に、データを帰属させる方向に働くことになります。また、対価の金額も影響します。

ある当事者をデータ帰属先とすることによって得られる社会的便益

 データについては、集積することによってより一層価値が生じる場合があります。そのような場合、データを集積することができる者をデータの帰属先とすることによって、そのデータを一層活用することができ、それが社会によって有用な場合があり、そのような場合には、そのような者をデータの帰属先とし、データの集積を促進することがデータの利活用にとって有益であり、データ取引に関するサービスの利便性の向上や支払われる対価にも反映されることとなるため、そのような選択をする方向に働くことになります。

データの利用権限

利用権限

 データの利用権限についても、データの帰属先とほぼ同じ考え方が適用できると考えられます。もっとも、利用権限は、帰属するかしないかという二者択一的な帰属先の決定と異なって、様々な選択肢の中から設定することが可能です。

利用権限の決め方

 データの利用権限についても、データの帰属先と同様に、①データの性質、②データの創出に対する各当事者の寄与度、③データの利用により当事者が受けるリスク、④データ取引に関して支払われる対価の金額が考慮されることになるが、これらに加えて、⑤データ利用の必要性も考慮することになります。

 利用権限については、以下の点などについて定めることになります。

対象となるデータ

 利用権限の対象となるデータを特定する必要があります。利用権限の対象外のデータについては、当事者は利用権限を有しないとするのが通常の感覚ですが、契約に規定しない限り、現にデータにアクセスできる当事者は、基本的にデータを自由に利用できることから、もし、利用権限の対象外のデータについては、当事者に利用権限を与えないのであれば、利用権限以外のデータの利用を禁じる旨の規定を契約に定める必要があります。

 また、元データを加工・分析することにより生成される派生データについても、利用権限を設定するか否かを検討する必要があります。元データよりも、加工・分析された派生データの方に価値があることも多いことから、派生データについての利用権限を定めておくことを検討する必要があります。

利用目的

 データの利用を利用目的で縛ることが考えられます。データの利用をこの目的の範囲内で限定することは一般的にみられるところです。

 トラブルを避けるためには、取引の実情に沿ってできるだけ具体的に定めることが望ましいといえます。

 契約で利用目的について定めなければ、現にデータについてアクセスできる当事者は、基本的には、どのような目的でも自由に利用できると解釈することになると考えられます。

 なお、パーソナルデータを含む場合には、個人情報保護法は、個人情報の利用を個人に通知・公表した利用目的の範囲内に限定しているため、契約の規定に関わらず、その制約に服することになります。

利用形態

 契約では、当事者に、これらの利用形態のうち、どのような利用形態での利用を認め、どのような利用形態での利用を禁止するのかを設定することが可能です。

 データの利用形態としては、データへのアクセス、閲覧、複製、加工、分析、改変、消去、訂正、第三者提供、開示などがあります。これらの利用形態うち、当事者にどのような利用形態が認められているのかを明確にすることが望ましいといえます。

利用条件

 利用形態において、どのような利用条件を定めるかについても重要です。利用条件としては、利用期間、有償/無償、独占的/非独占的などが考えられます。

第三者提供

第三者提供の可否の考慮要素

 データについて、一方当事者が、第三者に提供することも考えられます。

 そして、データについて現にアクセスできる当事者は、契約に定めなければ、基本的には、データを自由に用できるのであるから、第三者提供も、契約上の規定がなければ、自由にできることになります。もっとも、データ取引においては、一般的に契約には秘密保持条項が設けられていることから、同条項によって第三者提供が制約されることが多いといえます。

 データを第三者提供を認めるか否かは、当事者の交渉次第であるが、データ提供者側としては企業秘密が流出することによって争力が失われることの懸念がある一方で、データの第三者提供を禁止するとデータの利用が阻害されるというデメリットがあります。

 データを第三者提供を認めるか否かは、第三者にデータを利用させることによって当事者が得られる利益と第三者がデータを利用することによって生じる当事者の不利益を比較衡量することによって決定することが考えられます。具体的には以下の要素を考慮することが考えられます。

  • データの性質(営業秘密、ノウハウを推測可能な者か、個人のプライバシー権を侵害するものではないか等)
  • 営業秘密、ノウハウ流出等を防止するために取られている方法(工場を特定する情報を削除する、同種の機器全体の統計情報として処理する等)
  • 提供先の第三者が競業者であるか否か
  • 提供先の第三者の利用に対してどのような制限を課すか(ただし、実効性を確保できるかについて慎重な判断が必要である)
  • 対価の額、分配方法

第三者提供における懸念の解消法

 データが第三者提供される場合、データ提供者の立場に立つと、自社の機密情報やノウハウが外部に流出することや、自社の競争力が低下することを懸念されることが想定されます。データそのものが外部に流出しないとしても、自らが提供したデータから得られた知見が外部に公開されると同様の懸念が生じます。

 このような懸念への対応としては、以下が考えられます。

  • 第三者に提供する知見等について、データ提供者が事前に確認する手続を設けることで、その知見等の第三者への提供が、データ提供者にとって不利益なものとならないことを納得してもらい、その懸念を払拭する
  • 第三者の提供にあたり、データ提供者の競合他社には提供しないことを条件とする

 上記に加えて、データ提供者に対して、そのような懸念を乗り越えてデータ提供をするインセンティブを与えるために、第三者提供によって得られる利益を何らかの形で配分することも考えられます。

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